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海外赴任規程 給与と所得税

はじめに

海外赴任規程を作成するにあたって、人事担当者が最も悩まされるのが、今回のテーマとなっている税金の問題かと思われます。

海外赴任者に係る国内の個人所得税については、海外赴任者が赴任前において日本でどのようなポジションだったのか、そして赴任後において海外でどのようなポジションに就くのかに応じて、その取扱いが異なります。

また、赴任時や帰任時の給料や賞与を支払う際の個人所得税の取り扱いについても、ご案内させていただきます。

国内で支払われる給与の個人所得税の取扱い

海外赴任者が赴任中に国内給与(以下、「留守宅手当」といいます。)を受け取る場合、その者が赴任前に日本で役員だったか社員だったかに応じて、その留守宅手当に係る個人所得税の取り扱いが異なるため、注意が必要です。

このように個人所得税の取り扱いが異なるのは、役員の本来の役割が、日常の業務に従事することではなく、取締役会に出席して企業経営に従事することに起因しています。

つまり、役員としての国内業務(企業経営に従事すること)は海外にいてもできるため、役員の報酬・賞与は国内源泉所得として、日本で課税されることになっているのです。

海外赴任者が海外赴任中に国内で受け取る留守宅手当に対する個人所得税の取り扱いについて、国内外でのポジションに応じて次の表にまとめてみます。
(参考 所得税法第212~213条、所得税法施行令第285条)

 

常勤社員・使用人兼務役員

非常勤役員

国内

一般社員

非課税

非課税

役員

20%課税

20%課税

20%課税or非課税(※)

20%課税

(※)日本で役員であったとしても、現地で常勤の社員又は使用人兼務役員であれば、現地の勤務内容が一定の要件を備えることで非課税扱いを受けることが可能です。

赴任時及び帰任時の給与と税金について

一年未満の予定で海外勤務する者は日本の居住者に該当するため、その者が受け取る給与や賞与については、国内社員と何ら取り扱いは変わりません。

一年以上の予定で海外勤務することになった者については、赴任時と帰任時について、税務上の取り扱いにご注意ください。

(1) 赴任時の給与に係る所得税

1年以上の予定で日本を離れる者は、出国する日の翌日に日本では非居住者となりますので、その者の「国外源泉所得」については、税金がかからないことになります。

ただし、所得税基本通達212-3より、給与の計算期間が1ヶ月以下の場合において、給与支払日に日本の非居住者であるときは、その者の給与については全額が「国外源泉所得」とみなされ、その全額に対して非課税、ということになります。

(2) 赴任時の賞与に係る所得税

前号でご説明しました(1)に該当する者が出国後最初に受ける賞与について、その支給対象期間のなかに国内勤務していた期間が含まれていれば、その国内勤務期間に対応する賞与については国内源泉所得に該当し、20%の課税がなされます。

賞与額の按分の仕方については、支給対象期間内の国内勤務日数を支給対象期間の総日数で除し、この金額に対して20%が課されることになります。

(3) 帰任時の給与に係る所得税

1年以上の予定で日本に居住する場合は、入国日から居住者扱いとなり、その者が受け取る給与は全額課税されることになります。

つまり、居住者となってしまうため、帰任後初めて受け取る給与のなかに海外の給与(国外源泉所得)が含まれていたとしても、全額が課税対象となります。

(4) 帰任後初めて受ける賞与に係る所得税

上記(3)に該当する者が帰任後初めて受け取る賞与について、その賞与の算定対象期間のなかに海外で勤務していた期間が含まれていたとしても、その期間分も含めて、受け取った賞与の全額に対して課税されます。

海外赴任者とその家族への補償

弊社に海外赴任規程についてご相談をいただく場合のご相談者は、大きく分けて次の3種類に分かれます。

  1. 既に複数の国・地域への海外赴任者がいる会社の海外人事部の方
  2. はじめて海外に出る会社の経営陣の方
  3. はじめて海外に出る会社の人事部門の方

1は、既に海外赴任者に係るトラブル事例を多く有している場合が多く、それらに対応する社内マニュアルも備えられているケースが多いです。その為ご依頼をいただくのは、複数拠点における赴任者への給与体系や待遇の違いを整理し、全ての海外拠点に共通した海外赴任規程を作成してほしいという内容になります。

2は、海外赴任者に配慮しながら、他社の事例を参考にして作成したいという場合が多いのですが、決裁権限をお持ちの経営陣が対応されますので、何事も決まるのが早いです。

3は人事部門の担当者が経営陣から海外赴任規程の作成を命じられたものの、どのように作成すべきか分からなくて頼って来られる場合が該当します。
 

弊社では、本稿に記載しているような「海外赴任者とその家族への補償」について、事前に決裁権者にご説明させていただくことを強く求めております。

決裁権者にご理解いただけずに規程の作成を進めても、経営陣と担当者の間で意見の相違が見られることが多いためです。

上記のように相談者が誰であるかによって規程完成までのスピード感に違いがあるものの、すべてに共通した課題として認識いただきたいのは「会社は海外赴任者やその家族に対して、どのような補償を行おうとしているか?」ということです。

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2024年11月29日

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